そしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた
詩集『魂のいちばんおいしいところ』谷川俊太郎著p.91
引用させてもらった部分は、表題作「魂のいちばんおいしいところ」の最後のパートです。この最後のパートを読む前までは、この詩はりんごについて書かれたものだな、と思わされます。
始めの部分は、「神様」や「大地」や「水」や「太陽」が素晴らしいりんごを育んでくれたという事が書かれています。それに続いて、そのりんごを「あなた」がくれたということが語られます。
そして最後に、広告のコピーのように美しく、「あなたの魂のいちばんおいしいところを 私にくれた」という一文が出てきて、一気に、「あなた」が主役になります。
りんごは「あなたの魂」のことだったのだ、という事があかされます。前半でつくられた素晴らしいりんごのイメージが、一気に「あなたの魂」に注ぎ込まれます。一本背負いがきれいに決まったような、爽快感です。
隠喩のお手本のような使い方だと思います。
※隠喩(いんゆ):「~のような」「~みたいに」などを使わない比喩(ひゆ)。