谷川俊太郎さんの詩から学ぶ 効果的な書き方 (14) 隠喩(いんゆ)のお手本

そしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた

詩集『魂のいちばんおいしいところ』谷川俊太郎著p.91

引用させてもらった部分は、表題作「魂のいちばんおいしいところ」の最後のパートです。この最後のパートを読む前までは、この詩はりんごについて書かれたものだな、と思わされます。

始めの部分は、「神様」や「大地」や「水」や「太陽」が素晴らしいりんごを育んでくれたという事が書かれています。それに続いて、そのりんごを「あなた」がくれたということが語られます。

そして最後に、広告のコピーのように美しく、「あなたの魂のいちばんおいしいところを 私にくれた」という一文が出てきて、一気に、「あなた」が主役になります。

りんごは「あなたの魂」のことだったのだ、という事があかされます。前半でつくられた素晴らしいりんごのイメージが、一気に「あなたの魂」に注ぎ込まれます。一本背負いがきれいに決まったような、爽快感です。

隠喩のお手本のような使い方だと思います。

※隠喩(いんゆ):「~のような」「~みたいに」などを使わない比喩(ひゆ)。