このスマホ無料詩がすごい!⇒「壁と音質」柳本々々(著)

「壁と音質」柳本々々(著)
難解度…小
明るさ…暗い

黒いもやのようなものが写っている。なんかこわい。電話して、なにを撮ったの? ときくと、壁とかシーツ、という。なんかこわかった。「いい壁だね」「さぐってたよ」「なにをさぐってたの?」「音質」
「壁と音質」より

 この詩のテーマになっているのは、奇妙な画像やコメントを送ってくるメール相手の強いイメージだと思います。現代美術や前衛映画で扱われる種類の、ちょっと狂気の世界にふみこんでしまったような、「なんかこわい」イメージ。一般的には受け入れられにくい、マニアックで難解なものだと思います。
 それを、一般的に受け入れられるような読みやすいものにしているのは、話者である「わたし」の、ツッコミだと思います。
 「なんかこわい」「なんにも噛み合わなかった」「ふしぎなことをいっているぞ」とコメントすることで、ここは異常な部分なので理解できなくて良いですよ、と教えてくれているようです。
 そのおかげで読者は、理解すべき部分と、理解しなくていい部分を切り分けて読めるので、読みやすくなっているのだと思います。
 また、作者自身が狂気の世界に踏み込んでいると誤解されるリスクを回避する効果もあると思います。

 試しに、ツッコミを無くして、「なんかこわい」部分だけ抜き出してみたいと思います。 

黒いもやのようなもの
壁とかシーツ
「さぐってたよ」
「音質」
ブレた写真 コップの写真
戸の桟を半分だけわざと加工で消してある写真
富士山の前に笑って立っているように本人が雑に画像加工してつくった写真
山と人の尺度がおかしいのに、わらっている。
「さぐってるさいちゅう」
「あなたのことをわたしに理解できないままにしてください」

 これはこれで、現代詩を読みなれた人にとっては魅力的な詩になっていると思いますが……。
 このような純粋芸術的な魅力と、読みやすい文章にすることを両立させているものは、読んでいて感謝したくなります。

※同じ趣旨で書いた別の文章がありますので、よかったらこっちも読んで下さい。
谷川俊太郎さんの詩から学ぶ 効果的な書き方 (8) 宇宙人との対話