文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

晴と雨の境界線上

 今朝、自転車で教養部のある校舎に向かっている時、雨が激しくなったり、急にパタッとやんだりを繰り返していた。

 ふと右側を見ると、向こうの町の方までずっと青空だった。そして左を見るとずっしりとした雨雲だった。僕は晴と雨の境界線上を通っていたようだった。

 少し登り坂なのに、ペダルがやけに軽く感じた。5速のままになっていて、いつもなら2か1に落とすとこだけど、そのまま5速で、ぐんぐん進んだ。

 気のせいか、何かの錯覚だとは分かっていたけど、妙に神秘的だなという感じは否定しきれなかった。

 こんなことってあるんだなと思いながら、坂を5速のまま一気に登りきった。登りきったところは交差点で、信号が赤だったので、横断歩道の前で待っていた。

 また激しいどしゃぶりになっていた。

 信号を見ようと視線を上げると、横断歩道の向こう側は、晴天で、車のフロントガラスが発光体のように水銀色に輝いていた。そして、美しい女の人が僕の真正面の向こう側で、こっちの方を向いて立っていた。

 その人は昨日、図書館で僕の右斜め前に座っていた人だった。今日もオレンジ色の大きなカバンを持っていた。こんなことってあるんだなと思いながら、青になったので、僕はゆっくりと進んだ。

 彼女のいる、晴れの方に向かって。