片根伊六 帳

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どこかで感じたことがある寂しさ

            どこかで感じたことがある寂しさだ。

寒さと関係があるのだろう。 音楽とは違う種類の流れを感じる。 影には、ぼんやりとした白がよく似合う。 コートが、犯罪者のように斜め上から、 僕を見おろしている。 僕は、ある観点から見ると、 衰弱しているのかもしれない。 時間が点滅している。僕だけ、 ということはないだろう。 理論的には、どこかに誰かが、いるはずだ。 広がりを感じている。 支配的な能力を持った広がりが、 紳士的に僕を、誘惑している。 なぜだろう? いまさら、僕はもう 引き返すことができない。 大部分のものが神秘的な、夜。古典的な 亡霊が、僕の新鮮な知識を狙っている。 誰かが、どこかで、待っている ような気がする……      

ほんとうに寂しさは色々だ。五感をよく使って思いを探りながら「僕はもう/引き返すことができない」と原点に行き着く。しかし希望をも見ている。その思考の揺れが、そのまま作品の巾ともなっている。 柳生じゅん子「読者投稿作品・選評」『詩と思想/1999.5』p127。 「寂しさ」というような、あいまいでとらえがたいものを表現しているのですが、こういう場合、具体的なイメージで迫らないと、概念的になってしまいがちです。この詩は、そういう点では、具体的イメージに乏しいのですが、そこを逆手にとって書いたり、概念をぼんやりと擬人化してみたりして、ある程度は成功しています。たとえば第四行目は「白には、ぼんやりとした影が」としてしまえば、常套的になってしまいます。 日原正彦「読者投稿作品・選評」『詩と思想/1999.5』pp..125-126。