片根伊六 帳

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ハーモニカ

            暗闇の中から

白い活字が浮かび上がる。 そのハーモニカを吹く女の子の唇が ぼくを死なせた。

紅いスペースシャトルが 僕の星を、ついに見つけた。 星の中心部には僕の直感が隠されている。 紅い、黄色い、 直感が未来を語りはじめて、 そのハーモニカを吹く女の子の唇が ぼくを死なせた。

ハーモニカを吹く女の子の前に置かれた たくさんのお金が入った帽子。 黒い、誘う、夜の帽子。 バスが何台も通り過ぎ、 観衆は家路についた。 お金、音色、

唇が、ハーモニカが、 ぼくを死なせる。 駅は戦うためにあって 地下空間にもつながっていて 地底から低音の 恐いものが聴こえる。

ぼくのイメージは制御されている。 指が、キーボードが、 物語が、

そのハーモニカを吹く女の子の唇が、 ぼくを死なせた。      

「ハーモニカ」片根伊六と「青くめんどくさい星」蓮岩千夏にも、同じ繰り返しの技法が読み手の心に残るものをもたらしています。もっとも「ハーモニカ」は繰り返しで終わっているために作品全体が閉じているのに対して、「青くめんどくさい星」は最後でその繰り返しを破る要素を持ち出している点が違いますが、どちらも一定の水準に達した作品です。 安藤元雄「今月の作品」『ユリイカ/2000.8』p.241。