文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

イキイキとした犬

            イキイキとした犬を飼っています。

科学の進歩によって2足歩行できるようになった、人型の犬です。 色はモスグリーンです。 (ただし繁殖期には少しグラスグリーンがかってきます) 彼はとても良い犬です。 (おそらく50万円はくだらないでしょう) 贅沢は言わないし、毎日3時間は勉強します。 自由時間には趣味の本を読みます。 隣のお爺ちゃんは最近よく「だいぶ食べ頃になってきたな」とか言っていますが、そういう感覚は、僕には理解できません。 時代遅れだと思います。 モスグリーンの犬の肉なんて、いかにも合成着色料入りという感じがします。 僕は無印良品の犬肉以外は食べれません。 だからなるべく外食をしないで、自炊します。 ところで、彼の名前は、片根伊六(2代目)です。 伝統芸能の継承者みたいに、僕の名前を継いでもらうことにしたのです。 (本名はモスグリーン・ポチという、わりとベタな名前です) 友達の科学者が、彼のクローンを作ってあげると言ってくれているのですが、いろいろ考えてけっきょく断りました。 今は不景気な時代なので、なんとなく保守的になっているのかもしれません。 現状維持、という感じです。 それからこの前、僕が何日か留守にしている間に、全身を金髪に染めてしまっていたことがありました。 たぶん、中田の(1998年のワールドカップの時の)影響だと思われます。 僕は怒って、速攻でモスグリーンに染め直させました。 犬は親からもらった体を簡単にいじります。 本当に頭にきます。 もう、バカです。 まさかうちの犬にかぎって、という言い方も古いですが、まったくそんな感じです。

実は、今から30分ほど前に、(ちょうど、右の「まったくそんな感じです。」という文章を書いた後に)彼は死にました。 犬癌でした。 突然の事でびっくりしました。 隣のお爺ちゃんに食べられないように、庭の桜の木の下にでも埋葬してあげようと思います。 本当にびっくりしています。 まだ実感がわきません……。

 

2代目片根伊六に捧ぐ ××××年×月×日×時×分 片根伊六(初代)

   

『ゴブリン/5号』