文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

禁ズル

            ワタシは 人類史上はじめて 「禁ズル」と言った人物だ つまり 法律の原型となる革新的な考え方を はじめて提示した 人物だ 偶然だった 「ワタシの影をふむのを禁ズル」 と何げなく言って それが記念すべき日になったのだ 「禁ズ<!--more-->ル」は とてもワクワクする出来事だった 「禁ズル」と言うと なぜかみんな ワタシに従うのだった

人類史上 2番目の「禁ズル」は 「身長が165センチ以上の女の人は 服を着ることを禁ズル」だった 資源の有効利用と見せかけて 本当はYsさんの裸が見たかっただけ なのだったが なぜかYsさんだけが 「禁ズル」を無視した そこでワタシは あの恐るべき言葉 「罰スル」を思いついたのだった 若い全盛期の創造力が瞬発的に 直感的に捕らえた言葉だった 「身長が165センチ以上の女の人なのに 服を着ている人は 罰スル」 とワタシはYsさんに それとなく言った 言うまでもなく それが人類史上はじめての 「罰スル」となった

Ysさんの裸を いつでも好きな時に見れるようになったワタシは いつの頃からか 世界征服をたくらむようになっていた 当然の流れだった それ以外の道が考えられようか(いや考えられない) ワタシは 人の集まるあらゆる場所に 世界征服のための紙をはった 「禁ズル」と「罰スル」をペアーで体系的に把握し さらに超越のレベルまで飛躍させ シンプルかつ斬新に言い切った 革命的な 人類史上はじめての紙だった その紙には次のように書かれていた

「ワタシが紙に書いた 禁ズル を無視することを 禁ズル さもないと それなりに 罰スル」

あの あらゆる権力の原点とも言える出来事から かなりの歳月が流れた だから世界は すごいことになっている ワタシ以外のたくさんのワタシタチが 毎日すごい数の 「禁ズル」と「罰スル」を書いているのだ そして複製技術の効果もあって かなりのペースで世界中に広まっている それもこれも全部 ワタシのセイだと言うのだろうか(いや そうとは限らない)

悪気はなかったんだけど結果的に世界を不幸にした時のノーベル にならってワタシも ノーベル平和賞的な賞を作った 「禁ズル」と「罰スル」を エコロジーのために利用した人には 名誉ある立派な賞をあげる ということにした それが「イロク・エコロジー賞」のはじまりだった ジャンルは 建築 詩 写真 読書 バスケットボール 野球 テニス コーヒー 胃腸薬 旅行 の10部門にした 他にも候補があったが キリがいいから とりあえず10までにした サッカーとテレビとインターネットを加えるかどうか 現在検討中である

これですべて 語りつくした 「すぐれた創造行為には 恋愛感情がからんでいる」 ということが分かっていただけたと思う もう思い残すことはない すっきりした 最後に ワタシに 創造のエネルギーを与えたてくれたYsさんに 感謝の言葉を書いて この文章をしめくくりたいと思う ありがとう そして 今でも好きです よかったら連絡ください 本気(マジ)で待ってます……

     

これは力作ですね。[…]まあ、寓話ですから、彼の書いているのは、寓話としてどういうふうに提示するかというのをよく考えていて、文体もそれに合わせてちゃんと決めているし。社会ルールに対する皮肉も効かせたりしてやっているんですけれども、特徴的なのは「法律」とかいうそういう社会的に組織されているものが、ほんとに個人的な恣意的なところから発しているところを、彼がそこから発想しているところが彼らしいところでしょ。ユーモアもちゃんと入れているし、おもしろかったなと思いました。 関富士子「研究作品選」『詩学/2000.1』pp..112-114。