文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

ローズマリー

            天使(彼女)と人間(僕)との禁断の(つかの間の)恋を楽しんでいた。ハッピーだった。でも、地平線に向かってバイクでブルルンと出発するイメージが夢に出てきたから、そろそろこの恋も終わりなのかもしれないね。こんな夜はブローティガ<!--more-->ンの『アメリカの鱒釣り』にかぎるよ。ああ、セーヌ川の畔にぽつんとある民家の軒下カフェでエスプレッソを飲みたい。キャンプ場で食べるイクラ丼のトロトロ感を彼女にも味わわせてあげたかった。今宵、月が出ているかどうかは分からないが、野兎はどこかにいるのだろう。ほのかにローズマリーの香りが漂っているのに僕は、ローズマリーがどんな外面をしているのか知らない。ましてや内面なんて素人だから畏れ多い。明け方には老人会に混じってジョギングをしようか。僕は僕自身につきまとい過ぎるから勘弁してほしい。ストーカー法はこの特殊ケースに対応できるだろうか。明日、駅の交番のインテリ婦人警官に相談してみよう。そして即興でつくった悩みごとを打ち明けて同情してもらおう。うまくいくかなぁ。ドキドキして夜も眠れねぇなぁ。グーグーグゥーー。

   

『抒情文芸/100号』