文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

トウキョウ冬の陣

            アシックスの白いブーツをはいた天使が敵の本陣に切り込んでいく。美しい不協和音としての少女。8倍速で再生される細い右腕からのピンポイント爆撃が、断続的に続く。空間がない、音だけの次元。システムの流れに逆う職人的な防御で敵の主<!--more-->力を攪乱させた。戦術が秒単位で高度化される。音の女神が冷淡になった。戦争も終わりに近づいていた。女神たちが、その次の次元に迷いこんでいるのだ。今のうちに助けだすんだ。負傷した天使はまだ中心にいて、ノイズの強度でつぶれそうだ。武器はもっていない。生身の声だけが頼りだ。英雄になるんだ。戦争が終わる前に!

     

『抒情文芸/101号』