文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

風と雲 (詩)

            葉っぱになった桜並木を、風が冷たくさわって行きます。

「今日はだるいな」風は言いました。 「うん、今日はまったくダメだね」暗い白いろをした雲も、ヘリコプターをうっとうしそうに見ながら言いました。

向こうから黒い2つの点々が、こっちの方に近づいてきました。 高校生か中学生の男の子と女の子のようです。 二人とも少し下の方を向いて、とぼとぼ話してやってきました。

風は、そっと二人の後ろに回りこんで、いきなり「うわぁー」と、間を全速力で抜けてやりました。 「うぅ」と小さく身をすくめて、女の子は男の子に少し触れるくらいになりました。

つられて雲も、とっさにお腹に力を込めて、重たい雨を降らしはじめました。 「あぁ!」と、男の子は折りたたみ傘を出して、女の子にかぶせてやりました。

風と雲は、苦笑いの表情で、二人をしばらく見ていました。

「黒い制服に、紅いリュックサックはいいね。」と風がいいました。 「うん、いいね」と雲が言いました。