文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

ばあちゃんのお見舞い (詩)

            ばあちゃんのお見舞いに行った。

いつものように、驚異的な回復力でケロッとしているだろうと思って、気軽な感じで行ってきた。

開け放たれた病室の入り口からのぞくと、奇妙な角度で背中を曲げて寝ているのが見えた。 入れ歯がずれて、出っ歯のようになっていた。 腕は、細い棒に、黒っぽいぶかぶかの皮膚をかぶせているようだった。 息が苦しそうだった。

こんなばあちゃんは見たことがない。 今回はとても衰弱している感じだった。

話しかけると、きつそうに答えていたが、 奥さんが根気よく話を続けていると、だんだん、苦しさを忘れて、生気が戻ってきたようになった。

子供たちは退屈そうにして、僕の膝の上に登ったり、椅子を奪い合ってケンカしたりしていた。 ばあちゃんはそれを見て、少し笑った。

開放的なナースステーションで、 看護師さんたちは、明るい表情で、親切に対応してくれる。

入れ違いで来た母さんや父さんや妹とエントランスで会った。 ばあちゃんに関する情報交換を和やかな雰囲気で話して別れた。

ちゃんと眠れてるだろうか? 床ずれして、背中やお尻が痛くなってないだろうか? と、不意に思い出して心配になったりはするけれど、 ほとんどの時間は、いつもどうりの気分で過ごしている。 テレビを見たり、ご飯を食べたり、絵本を読んだり、仕上げ歯磨きをしたり。

なんだか違和感がある。

ばあちゃんの衰弱した様子と、 僕を含めた周りの人たちの気分の軽さにギャップがある。 今思うと、空間や物や景色なんかのキラキラした感じも不自然だ。

夢のあるイラストの中に 現実の苦しみを持ったままのばあちゃんが 間違って描かれたようだった。