谷川俊太郎さんの詩から学ぶ 効果的な書き方 (6) 著名なキャラクター

            <strong>もう何度自分に問いかけたことだろう

ぼくには魂ってものがあるんだろうか 人並み以上の知性があるとしても 寅さんにだって負けないくらいの情があるとしても

いつだったかピーターパンに会ったときに言われた きみおちんちんないんだって? それって魂みたいなもの? と問い返したらピーターは大笑いしたっけ

詩集『夜のミッキー・マウス谷川俊太郎著pp..20-21より

これは、「百三歳になったアトム」という詩から引用させて頂きました。 この詩には、アトムはもちろん、寅さんやピーターパンも出てきますね。 また、この詩が入っている詩集『夜のミッキー・マウス』の中には、「朝のドナルド・ダック」「詩に吠えかかるプルートー」という詩もあります。

誰もが知っている著名なキャラクターを登場させることは、様々な効果があるように思います。 著作権の問題は、ケースバイケースで、もし訴えられたら確実に負けるだろうというものも、実際には訴えられなくてセーフだったりしますし、うかつに断定的なことは言えませんが... ここでは、効果についてのみ考えてみたいと思います。

まず、「アトム」について説明がいらないということ。 タイトルが「百三歳になったアトム」で、1行目でいきなり、「人里離れた湖の岸辺でアトムは夕日を見ている」と始まる。それだけで面白い。 もう悪の巨大ロボットとの戦いからは引退して、余生を送っているのかな、といったことが想像がされます。

それから、「アトム」というキャラクターに、さもありそうな事をさせても面白いですし、イメージを裏切るようなことをさせても面白いですね。 (実際に面白いものになるかどうかは、ユーモアのセンスしだいということになるのでしょうが...) アトムが、人間と同じような心を持っていながらも人間とは違うということに悩む場面は、原作にもあったと思いますが、百三歳になってもまだ悩み続けているということで、少し切なくなります。

そもそも、アトムが原作のアニメの中だけに存在するのではなく、アニメの外の現実世界に実際に居るということが分かって、それだけで興奮するのだと思います。 さらに、ピーターパンと会った時のエピソードも出てきたりして、至れり尽くせりです。 本当は現実世界ではなくて、谷川さんの詩という別のフィクションの中なのですが、詩の世界に入り込んで読んでいる間は、その世界が現実世界になるようです。