文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

悲しい花

            うつくしく咲く花は悲しいです。

やがてしぼんで、 茶色のかさかさになってしまいます。 そしてもう何も無くなってしまいます。

写真や映像ではダメです。 じっさいに在ることとはちがいます。 3Dや4Dや5Dでも……。 悲しさがますばかり。

瞬間冷凍してはどうでしょう? いいえそれもダメです。 何か手を加えることは、おそれ多いことです。

うつくしい花がどうなってしまうとしても、 見ているしかないのです。 思うしかないのです。

悪魔が来たとしたら 取引してしまうでしょうか? 拒否する勇気はあるでしょうか?

本当でないと分かっていても 夢かまぼろしでもかまわないと 思ってしまうかもしれません。

うつくしい花が咲いています。 うつくしい花が咲いています。

ずっとじっと見ていましょう。

老人になって呆けてきて いろんな記憶が消えていっても うつくしい花だけは ずっと咲いていますように。