片根伊六 帳

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それこそが本当の働き者のしるしなのよ

 久しぶりに『浴室』を読んだので、『ムッシュー』も読んでみようと思った。どんな話だったか忘れたが、わくわくして読んだ記憶がある。パラパラめくると、線をたくさん引いている。

 あなたっていつでもまるで何にもしてないような様子だわね、と彼女は折を見ては親しみのこもった調子で言い、それこそが本当の働き者のしるしなのよ、となかなかうがった意見を付け加えた。
『ムッシュー』ジャン=フィリップ・トゥーサン(著)p.10

 面白い表現だけど、実際、どういうことだろう? トゥーサンが深い意味を込めて言っているわけではないかもしれないが、あえて具体的に考えてみると、どういうことだろう?
 何もしていないような様子であるにもかかわらず、クビにもならず、ある程度の地位にあって、ある程度の待遇を受けていて、しかも同僚からも嫌われていないということは、実際には、ある程度の能力があって、実績も残しているものだと思われる。
 ある程度の実績を残しているからには、実際には、何もしていないということはありえず、本当はしっかり働いているにもかかわらず、それをこれみよがしに見せないことを美徳にしているに違いない、と思われるのだ。
 本当に、それは実際に、効率よく、多くの仕事を高いレベルでこなしている証拠なのかもしれない。
 突発的な事態が起こっても、常に余力があるから、冷静に受けとめ、効率良く、最小限の労力で、最短で、それを収束させることができるかもしれない。