片根伊六 帳

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これまでの人生で、一番おいしいと感じたコーヒー

 いかにもカッコつけてる感じだから、これまでちゃんと書いたことがなかったんだけど、本当のことだから、やっぱり書いておくべきだと今思ったので、書いておこうと思う。


 これまでの人生で、一番おいしいと感じたコーヒーは、パリのセーヌ川のほとりの、対岸にオルセー美術館が見えるところで飲んだ、エスプレッソコーヒーだと思う。


 川岸の歩道に木製のカウンターがついた、ポストカードか観光ガイドにのってそうな屋台があって、きちんと黒と白の服を着た店員さんが居て、エスプレッソを頼んだら(いっしょに行った英語を喋れる人が頼んでくれたのかも)、小さなオモチャみたいな白いカップに、濃縮されたような濃い、苦いコーヒーが入っていて、ひと口飲むと、カァッーと胃から頭に向かって、蒸気みたいな感覚が抜けていって、妙にハイになって、晴れた空も、川に浮かぶ船も、壁の素材も、石畳も、石ころでさえ、もちろんオルセー美術館も、すべてが美しく感じたな。
 三〇年近く前のことだから、記憶が、かなり美化されているとは思うけど。
 はじめての海外旅行で、学生だったし、節約してたこともあって、数日間コーヒーをまったく飲んでいなかったことも大きな要因だったと思う。
 数日間コーヒーを断って、もう一度あの感覚を味わいたな、と思うことはあるけど、それはなかなか出来ないな。
 胃の手術かなんかして医者に止められているとか、そういった強制的な状況にならないかぎり、無理かもしれないな。
 白いカップは、小さいけど、肉厚でずっしりしていて、なんか特別な感じがあったなぁ。