文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

2017-09-05から1日間の記事一覧

水泳教室

先週のことだが、スケジュールの都合でチャールズ・ブコウスキー先生が来れなくなったので、リチャード・ブローティガン先生が代わりに来た日があった。この2人はどちらもアメリカ人で、名前も微妙に似ているのだが、教え方というか、性格は、まったく正反…

水と空気の境界面上

「プール」は、水で充たされた半球体と、空気で充たされた半球体とに分節された、ガラスの球体であった。 外は雪だった。 僕は、水と空気の境界面上を滑っていた。 クロールで滑っているとき、僕は水の世界に属しているのだと感じた。 白くてやわらかそうな…

志賀直哉と赤いペディキュア

志賀直哉の短編集『小僧の神様・城の崎にて』を読んでいた。真ん中あたりの、「石」という名前の女中についての、ちょっといい話を読み終えようとしていた。生活をこんなふうに良い物語にすることができれば、いろんなことが全て救われるだろう、などと考え…

こばん鮫

平日の午後3時~4時の間は、プールに必ずこばん鮫がいる。 おそらく、排水溝から入ってきてプールで1時間ばかり過ごして、4時になるとまた排水溝から去っていくのだろう。 実際に排水溝から出入りしているところを見たわけではないが、他に考えようがな…

丸みがある人物

ほっそりとしている でも ぷくぷくしている ほっぺたが有酸素運動で オレンジになっている マシュマロというより 中が透けて見える 和菓子のようだ 丸みの良い面ばかりが目立っている はじめて上に浮かんできた 僕の感じ方だ ああ 本物の太陽光線がふりそそ…

猿なんとか峡

1980年代中ごろの、あるカラッと晴れた夏の日のこと。僕はまだ、「ポスト・モダニズム」という言葉を知らず、村上春樹を読んだことがなかった。でも、あだち充のマンガは全部そろえていた。『ナイン』や『日当たり良好』は古本屋でまとめて買ったが、『…