文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

掲載

Mについて

僕は、パルコ7Fの バックヤードにいた 換気用の小窓が 1つ穿たれていて 制御された街のネオンが 暗闇と調和していた 左耳の裏に、刺激を感じ始めた 肉眼では見えない 限りなく細い針だった じっとしていた 赤と青の暗闇が 冷たく 漂っていた 3本目が差し…

球体

球体の中は ひんやりしていた 古代の生態系が 守られていた 呼吸を 最小限に押さえたのだが やはり 侵入してきた 肺が熱をもちはじめて 古代のウイルスに 侵されつつあった 『Booy Trap/1998.1』

光の柱

光の柱は そのためにあるのかもしれなかった ハドリアヌスがしたように 僕も 柱の中に 立ってみた そして ハドリアヌスがしたように 裸になった 黄ばんだヘインズと 破れた501は きれいにたたんで 祭壇にのせた すり切れたアジダスは 柱の外に 揃えた 目…

ハドリアヌス

ハドリアヌスは ニッチに腰掛けていた 懐かしそうに 石の硬さを確かめていた 僕と彼と どっちの方が寂しいだろうか? 僕らは一言も喋らなかったが たしかに ふたりとも 球体の中にいた 『Booy Trap/1998.1』

密やかな召集

ぎこちない腕をひきづりながら、輪郭の紅い、 黒い液体をゴクゴクと飲む。こよい、カラダ が心地よい麻痺状態で、ナニか特別な日の前 夜である、こよい、脳がピクピクと寒気を感 じている。天上の人々がラッキーな、元、地 上人でしかないと気づいた日から数…

病院の記憶

病室で 僕と おじいさんは 隣どうしだった。 その日も おじいさんは 戦争のことを 話し始めた。 大砲の音が聞こえると 普通のやつは 恐くなって、 後ろに下がるんだが ワシらは、逆に どんどん前進したんよ なぜだか分かるか? 大砲は、 遠くに飛ばすことば…

脳の床

脳の床に、 重くて薄い平面が 降り積もっている。 何枚も何枚も、 何枚も何枚も。 紅くて暗い空間が どんどん狭くなっていく。 溶かす効果のある黒いものを2盃 振りかけたのだが、 固まって でこぼこになり、 収拾がつかなくなってしまった。 動かないギタ…

日記のつづき

A君 (あやしい音響システムの発明者) を怒らせると、ちょっと恐い。 昨日も、100人の 音の女の子を ぼくのまわりに配置した。 しかも 夜中の2時半に! ぼくは正座して、ビートルズを聞きながら いつものアナウンサーじゃない 6時のニュースを見てい…

動きのある風景

そこに居るのは誰だ? 白い中にいる、光る灰色の人物。早く出てきてください。涙が流れる。僕は泣いてしまうぞ! 地面まで真っ白だ。等高線が消えていく…… 彼女が、この海の上を走ってきたのだ。赤い服を着ている。恐ろしいことだ。とても速いスピードだ。彼…

中原中也のように

歩き始めた時からずっと、感受性に違和感を感じていた。 そして不意に気づいた。 僕は中原中也になってた。 条件がピッタリあっていたのだ。 寒い曇り空の朝、みんな僕の知っている人達だった。 僕は一人一人に意識を向けた。 どんな部屋で起き、どんな朝ご…

男と女

舞台の背景は白い漆喰の壁面。 舞台装置としては、舞台のやや右よりに、若手漫才コンビのショートコントで使われるような折り畳み式の椅子が2脚あるのみ。 幕があがり、5秒後にロングスカートをはいた女が早足で登場。 女、舞台中央で逆立ちをしようとする…

人間の機能性について

この同じレベルの広がりの中に 何十億もの人がいて 何十億もの心があるのだと考えると、 この広がりの中で、 僕の心は何十億分の一でしかなく。 無力感だ。 僕が一人きりでいる時のこの膨張した 漆黒世界。 まろやかな重みのある 優しげで頼もしい 親密世界…

女の人/川端康成/メカヘビ

電車で、僕は女の人を見ていた。たまたま押されて、女の人が座っている前のつり革までやって来た、という資格で僕は、文庫本を読むフリをしながら、見ていた。慎重に。 帰りの電車でよく 『雪国』のはじめの部分を思い出す (今までに七回くらい) 川端康成…

女の子とライターとリンゴ

夏なのに 表参道に、枯葉がつもっています。 日焼けしたマッチ売りの女の子が タンクトップで タケフジのマッチを配っています。 「マッチはいかがですかぁ?」 ぼくはマッチを受け取って、代わりに ニコルのライターをかごに入れました。 高くはないけど、…

受動的な紳士

  せつなくて苦しいので、ぼくは拘束されていると気づいたのです。――ぼくは蒲団を蹴飛ばして跳ね起きました。そして静かな黒い廊下を、行ったり来たりしていました。 (ああ。雑煮を食べ過ぎた時の感じだ。でも我慢しなければ。ぼくは紳士的な人物なの…

失業問題も含む、ちょっとした考察

ぐぐっと突き進む感じの僕の意欲が小休止(あるいは大休止)している間に、コンセプトがいくつか過ぎ去っていったとしても、 かわいそうな人みたいな顔つきになる必要はないのだ。 テレビの上の壁に「運と出合いとキッカケ」と書かれたメモ帳の一ページが 留…

詩者について

夜中に目をさますと 左側に見覚えのある詩者が立っていて 無表情に ぼくの横腹を蹴りつづけているのだった ぼくは無表情に その詩者に話しかけてみた 今、何時ですか? 詩者は ぼくの質問を無視して なおも蹴りつづけていた しかたがないので ぼくは目を閉じ…

思いきってやってしまう

思いきってやってしまうタイプの女性だ ボクの詩への出演を OKしてくれたんだ ボクは 意味ありげに どしどしやってもらった 真剣に 知的に解釈して なんだってやってくれた 顔がいいんだ 古いコンクリートの壁を背景にして 静止するんだ 伝統的な手法で 光…

子供と孫

「こ こ ここは……」 「何人かのズバ抜けた哲学者たちが創った」 「抽象世界だ」 急に 予定されていたかのように 目が覚めて 時計を見ると 2時7分だった (今は3時3分ジャストだ) 誰もいなくなっていたのだ そして 知り合いが大勢あつまっていたのだ 真…

黒色微粒子

真っ白な画面を見ると、 重苦しくなってしまう。 目をつむって、はやく向こう側の 黒色微粒子に溶け込まなければ。 (シグマリオンは画面が小さいから 向こうに行くのが難しい。) 新しいカレンダー空間が 僕の右斜め奥に向かって伸びて行っている。 カレン…

高速移動装置の中で

速い音楽の流れる高速移動装置の中で。 白い陰から現れたシックな女性に敬礼する。 君は、あなたは、おまえは、あんたは……。 僕は二人称を使うのが苦手。 シックな女性は僕を「タカシ」と呼んだ。 僕は彼女を「ケーワイさん」と呼んでみた。 僕が以前つくっ…

荒野に教会の鐘が鳴り響く。

荒野に教会の鐘が鳴り響く。 ぐんぐんテンションが高くなる。 ぐんぐんぐんぐん、ぐんぐんぐんぐん…… そこで君が登場するのだ。 これでもかというくらい、めいっぱい 溜まったところで、 グゥワァンという感じで鮮烈に、 「僕にその音楽を貸してください。」…

禁ズル

ワタシは 人類史上はじめて 「禁ズル」と言った人物だ つまり 法律の原型となる革新的な考え方を はじめて提示した 人物だ 偶然だった 「ワタシの影をふむのを禁ズル」 と何げなく言って それが記念すべき日になったのだ 「禁ズル」は とてもワクワクする出…

偽造された季節

偽造された季節がテーマだった。 偽造された季語を持ったビジネス・ガールの横で、 ぼくは映画を見る(フリをしていた)。 映像で季節を偽造できた時代を模倣して、 ぼくは映画を見る(フリをしていた)。 太陽が、精確に移動している。 雲がランダムに配置…

核弾頭男

核弾頭に囲まれて横になっていた (空気が違う) (とても軽いのに) (強いエネルギーが充満している) 土踏まずから2Hのミツビシ・ハイユニの 削り立ての鉛筆が差し込まれてきた (皮膚が神経質になっていて) (ヒリヒリする) 一本づつ両方の脚の中を…

円グラフの作り方

人生の裏の目標は、少しでも長い時間を「良い状態」で過ごすこと、なのかもしれない。現時点から死ぬまでの時間を円グラフにした時に、「やや良い状態」「良い状態」「かなり良い状態」という部分が占める角度をいかに多くするか、そして「やや悪い状態」「…

雨の夜 (詩)

雨が降っている 秋の夜のことでした ひとっこ一人ない とても静な夜でした 見なれた通りの 見なれない風景を見ていると 身体がぜんぶ 物語の中の感覚に 移っていくようでした あらかじめ決まっていたかのように 初めての角で曲がって 初めての通りを 次々と…

暗示的な公園

―――黒服の天使が池の周りを飛びまわっている。ある微妙な速さで。速すぎず、遅すぎもしない、環境に配慮したスピードで。―――「新しい書き手の発掘を目的に実施」あるいは「既成にとらわれぬ清新な作品を期待」している、とある秘密結社に報告してみたのだが…

ローズマリー

天使(彼女)と人間(僕)との禁断の(つかの間の)恋を楽しんでいた。ハッピーだった。でも、地平線に向かってバイクでブルルンと出発するイメージが夢に出てきたから、そろそろこの恋も終わりなのかもしれないね。こんな夜はブローティガンの『アメリカの…

モーツァルトとキティーの恋の話し

モーツァルトが短調で酔ってる 悲劇のヒーローになってる 「一七才のガキンチョめ! 一〇年早いよ」と僕は言った 帰って数学をやりな 今度は再試してあげないよ! その夜 ネコなのにベジタリアンの やさしいキティは モーツァルトの前でミッキーを食べた ペ…