文体練習

片根伊六(かたねいろく)による、詩、物語、小説、エッセイなどを掲載しています。

掲載

ハーモニカ

暗闇の中から 白い活字が浮かび上がる。 そのハーモニカを吹く女の子の唇が ぼくを死なせた。 紅いスペースシャトルが 僕の星を、ついに見つけた。 星の中心部には僕の直感が隠されている。 紅い、黄色い、 直感が未来を語りはじめて、 そのハーモニカを吹く…

どこかで感じたことがある寂しさ

どこかで感じたことがある寂しさだ。 寒さと関係があるのだろう。 音楽とは違う種類の流れを感じる。 影には、ぼんやりとした白がよく似合う。 コートが、犯罪者のように斜め上から、 僕を見おろしている。 僕は、ある観点から見ると、 衰弱しているのかもし…

トウキョウ冬の陣

アシックスの白いブーツをはいた天使が敵の本陣に切り込んでいく。美しい不協和音としての少女。8倍速で再生される細い右腕からのピンポイント爆撃が、断続的に続く。空間がない、音だけの次元。システムの流れに逆う職人的な防御で敵の主力を攪乱させた。…

サイレンの音が

やっと痛み止めが効いてきて、 親知らずを抜いたところの疼きが治まって うつらうつらしていると、 サイレンの音がだんだん近づいて来たので、 ハッとした。 あっと思って起きあがった。 友達が、体調悪いと言っていたのを 思い出したのだ。 でも、よく聞く…

ガソリンメーター

迷走しているフリをしているだけなんだと 自分に言いきかせて、 あちこちで副産物を手に入れたい。 ガソリンメーターを思い出す。 人生がエンプティになるのを恐れる 助手席の子供に向かって 父さんは、 「ゼロになってもまだかなり走れるから、 大丈夫だよ…

お祖母ちゃんと卵

のぼり電車に乗ろうとして待っていると、いつの間にかお祖母ちゃんが、くだり電車に乗ってしまっています。 「お祖母ちゃん、違うよ、こっちに来るやつだよ、早く降りないと、早く、早く」 お祖母ちゃんは、むこうを向いたまま、じっと動きません。 プシュー…

イキイキとした犬

イキイキとした犬を飼っています。 科学の進歩によって2足歩行できるようになった、人型の犬です。 色はモスグリーンです。 (ただし繁殖期には少しグラスグリーンがかってきます) 彼はとても良い犬です。 (おそらく50万円はくだらないでしょう) 贅沢…

6時の部屋

顕微鏡から微生物が解き放たれる ボクの部屋が元素の集積に変わる 親密な人が現れて 何かボクに 話しかける 空気の振動を受信する 透きとおった空間が 漂っている コンポのイコライザーだけが ボクを 繋ぎとめる 朝なのか夕方なのか わからない6時の部屋で …