片根伊六 帳

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1990~1999(20代)

イソジン事変

【僕】 喉が痛いので見てほしいのですが。 【白衣】 どのように痛いですか? 【僕】 喉の背中側の壁です。 ロッククライマーが登るような オーストラリアの崖になってしまってます。 そこに唾が流れる時 崖からたくさんの触手が伸びてきて その感度のよい痛…

3本の矢

スイートマン。 彼は熱帯雨林をかけぬけている。 きっといつの日か パパイヤマンを探しあてるだろう。 それは良いことかもしれないし 悪いことかもしれない。 渋谷パンプキンプリン。 君は唇を汚した。 受話器に内蔵された通信サーバから エラーメッセージが…

《 》

《 》を書くには適していない体調だ。でも音が鳴り始めたのだ。胃の空洞に悪い空気が溜まっている。重々しい雰囲気だ。指先の感覚が鈍くなっている。身体が拒絶反応を起こしている。眠い。それにダルい。でも音が鳴り続けているのだ。何が?《僕は正常でいら…

【インテリアパブリックver6】

ぼくが進入した背景都市の中では、古本色のものものが乱雑な子供部屋のように配置されていた。 数十種類の調味料を、にわか雨の水たまりに調合する少年に、朱色の三毛猫が襲いかかろうとしている。 1つの出来事を、3ホップ前までさかのぼって、そこから5…

腹ペコな音楽

給食室に行くと音楽室だった。 扉を開けると鍵盤だった。 冷凍庫の中にはバイオリンが眠っていた。 「256年に蘇った。私は聴いた。バイオリンが反転して、グニャグニャになり、私と響くモノが呑み込まれた。ウルトラの乳を飲んだ怪獣キングサイズだけが歌…

腹をすかした建築家

腹がへって眠れなかった。 冷蔵庫の中には、ドトール・アイスコーヒー(無糖、1リットル)が4パックと、丸かじりしてイビツな半分になったカマベール・チーズのかたまりと、もう酸化してしまっているはずの飲みかけの白ワインと……、そんなものしか入ってな…

有機的な軽金属

頭の頂点から胃のあたりにかけて にがくて、つやなしの黒の 不整形の 棒状の塊がある 素材は 意外と軽いもので 金属製の発砲スチロールに近い とにかく 僕を不快にさせる そいつの正体はわかってる 精神的なもの 55分後に始まる苦痛の暗示 物質化した暗示 …

ヒャッホォー!

「神聖な儀式のことを話しましょう。分かる人だけ分かって下さい。分からない人は逆ギレしないで、放っておいて下さい。」「そうそうこの、横滑りしながらかろうじて物語を維持しているような音楽は、君の伝統的な手法なんだからね。君も本当はビートルズや…

ひげ剃り師とコーヒー師

朝、目をさまして まだ うとうとしている間に ぼく専属のひげ剃り師が 顔に 蒸しタオルをのせてくれる。 しばらくすると 蒸しタオルをとって、熱い泡をぬってくれる。 それから、よく研がれたカミソリで ひげを剃りはじめる。 まだうとうとしている間に 痛く…

「宣言」

1 中小企業経営者 こんにち、最もハードな労働は、搾取する 労働である。そして最も疎外されているのは {搾取する人}である。 彼は何を搾取しているのか? {搾取する人}の労働、すなわち全能力、 全体力、全生活、全財産、全人生を賭けた労 働によって…

オフィス街のバカンス

ハイテク電話で武装した色男たちは カウンターで次の手を思案していた。 色とりどりの煙が チャイナドレスたちの口元から ぽっぽっぽっ、と放たれていった。 3人の私服技術者たちは クリームだらけの定食、α、β、γを それぞれ注文し 鼻の音だけで会話をかわ…

かれこれ二時間は歩き続けていた。

かれこれ二時間は歩き続けていた。 井の頭公園の森の中を歩きまわっているうちに、いつのまにか遊歩道からそれてしまい、けもの道のような薄暗い小径に迷いこんでいた。交通量の多い公園通りから一〇〇メートルも離れていないはずなのに、人気がなく、しーん…

水泳教室

先週のことだが、スケジュールの都合でチャールズ・ブコウスキー先生が来れなくなったので、リチャード・ブローティガン先生が代わりに来た日があった。この2人はどちらもアメリカ人で、名前も微妙に似ているのだが、教え方というか、性格は、まったく正反…

水と空気の境界面上

「プール」は、水で充たされた半球体と、空気で充たされた半球体とに分節された、ガラスの球体であった。 外は雪だった。 僕は、水と空気の境界面上を滑っていた。 クロールで滑っているとき、僕は水の世界に属しているのだと感じた。 白くてやわらかそうな…

志賀直哉と赤いペディキュア

志賀直哉の短編集『小僧の神様・城の崎にて』を読んでいた。真ん中あたりの、「石」という名前の女中についての、ちょっといい話を読み終えようとしていた。生活をこんなふうに良い物語にすることができれば、いろんなことが全て救われるだろう、などと考え…

こばん鮫

平日の午後3時~4時の間は、プールに必ずこばん鮫がいる。 おそらく、排水溝から入ってきてプールで1時間ばかり過ごして、4時になるとまた排水溝から去っていくのだろう。 実際に排水溝から出入りしているところを見たわけではないが、他に考えようがな…

丸みがある人物

ほっそりとしている でも ぷくぷくしている ほっぺたが有酸素運動で オレンジになっている マシュマロというより 中が透けて見える 和菓子のようだ 丸みの良い面ばかりが目立っている はじめて上に浮かんできた 僕の感じ方だ ああ 本物の太陽光線がふりそそ…

猿なんとか峡

1980年代中ごろの、あるカラッと晴れた夏の日のこと。僕はまだ、「ポスト・モダニズム」という言葉を知らず、村上春樹を読んだことがなかった。でも、あだち充のマンガは全部そろえていた。『ナイン』や『日当たり良好』は古本屋でまとめて買ったが、『…

直方体の青い水の中

直方体の青い水の中をススム 音楽 カラダが軽い ボクはススム ギュン ギュン グッッ... ハァー フゥッー ショッキングピンクと黒のボーダーが 現れる 重なる 消える なんども なんども 現れる 重なる 消える なんども なんども... ボクは閉じられてい…

「ボク」について

僕から生まれた「ボク」は リアルタイムで生身の身体から遊離して 次々と軌道上に打ち上げられる 軌道上での 「ボク」の唯一の行動規範は 強度を効率的に獲得することで それは 僕からすると とても無節操で大胆にみえる 軌道上に散乱している「ボク」が 関…

髪を染めることにした

髪を染めることにした。ベッドの中でなんとなく思い立って、今日中に髪を染めると決心した。高揚した気分でバッと跳ね起き、掛けぶとんを跳ね除け、あたかも期末試験の開始時間を自分の部屋でむかえた時のように、ニーチェアーに掛けてあるジーンズを無意識…

思考体

灰色の不定形の浮遊物が邪魔くさいから 金色の立方体のプラスチック製の容器に閉じこめる 高まり 重なり合う数字でできたモノの群が 思考を 電子顕微鏡レベルの球体に 分解し 7倍の処理能力で再構成してゆくから それに気づいた思考体から順に指が 支配され…

マルさんに関するエピソード

新しい芸術を愛する社交家のマルコポーロ 「オレのことをみんなマルちゃんと呼ぶ」と彼は言った 先輩だから「マルさん」と僕は呼んだ 白く光る長方形の画面が 目をつむった時の目の中の空間に浮かんでいる 左側が一番明るくて 右に行くにしたがって暗くなる …

ボクの世紀

自覚的な女の子たちが、例の古くて新しい音楽に乗って、やがて、ボクの世紀を支配するだろう。間違い無いだろう。高度な、セルフプロデュース機能を搭載した女の子たちは、もはや、親父たちを必要としないのであって、君の世紀は寂しい、心細いことになるだ…

ああ

------とても無防備で完璧な 明るい 生まれたてに微笑むイメージが 早朝に放流されたホタル的に 光っている 僕の向こう側の奧で すぐ近くで------うれしいけど 圧迫された感じで 涙がでそうになるのだ------思いつきで動くのだから こっちで制御できないので…

多数の球体が飛び跳ねている(難解な小説風に)

僕の まわりには多数の球体が飛び跳ねているのだが この何もない 地面さえ無い空間の中で 何に反射して球体は飛び跳ねているのかというと それは僕が設定した仮想平面に なのであって しかし球体の方は言うまでもなく現実存在であり 僕は その不意の出逢いを…

テレビと砂漠

「星」と「月」と「地平線」で暗示された夜の砂漠で、僕は、14インチのSONYのテレビのスイッチをいれる。 (リモコンがないので、電源を一度OFFにして、またONにしてスイッチをいれる) ワイドショーで、朝の日本の各地を見ながら、日本と、ここ…

プリンと春

プリンの内部空間にボクは裸で 横たわっていた ロウソクの焔に照らされ 漆黒の中 とろける黄金として どろっと輝く 「グリコビッグプッチンプリン」をベースに 「メイジフォレットトロケルプリン」と 「オハヨーヤキプリンカスタード」とが ブレンドされた …

屋根裏の散歩者

夜の盗撮が忍び込んでくる夏のある日のこと 暗黒街で 偽造リトマス試験紙を 手に入れた僕は スタコラサッサ スタコラサッサ と アーケードの屋根の上を散歩する三毛猫を 「屋根裏の散歩者」に見立てて 自分を完全犯罪しようともくろんでいた 「読者の皆さん…

駅のコンビニでブコウスキーに会った

今朝 駅のコンビニで ブコウスキーに会った 「あんたの詩を一通り読ませてもらったよ いいか 良く聞け インチキ野郎! オマエは何にもわかっちゃいねぇんだ まったく 何にもわかっちゃいねぇ まったくな…… ヘドがでる とっとと失せやがれ! このウジムシ野郎…